この間の値動きを見る限り、円安から円高へ基調転換した可能性が高くなっている。もちろん相場だから、揺り戻しはあるだろうが、円高へ転換した当初の値動きは、普通ならこのまま年内に105円前後の円高を覚悟する必要が出てくる。6月の対円高値からのドル反落率は6%を超え、1−3月のそれを上回ってきた。1−3月のドル反落は、結果的にはドル高・円安基調の中での一時的調整に過ぎなかったわけだが、それを超えてきたことから、今回は円高への基調転換の可能性が高くなってきたといえるだろう。
もう一つ重要なのは、今回の円高スタートの環境だ。今回円高がスタートする直前、円の実質実効レートの5年移動平均線からのかい離率はマイナス17%まで拡大していた。これはマイナスかい離率としては最大圏だったが、これまではかい離率がこのマイナス17%のところから始まった円高はすべて円高基調の新たな始まりだった。
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ちなみに、今年2月や昨年4月、一昨年12月なども一定の期間の円高ピッチとしては、今回並みかそれ以上のものとなったが、今回と明らかに違うのはこの実効レートの5年線からのかい離率で、今年2月でも14%、昨年、一昨年は12%に過ぎなかった。結果論ではあるが、かい離率はまだ拡大の余地があったというわけだ。
円の実質実効レートの5年線からのかい離率がマイナス17%まで達したのは、今回以外では98年8月、97年4月、82年10月などがあったが、いずれも円高に転換すると、ドルは半年以内に15−20%の下落となっていた。今回それを参考にすれば、年末までに100−105円の円高の可能性さえ出てくるといった見通しになる。
ここ数日の値動きは荒く、クロス円の下げ方など一部はオーバーペースの感じもしないではない。もちろん相場だから揺り戻しもあるだろう。しかし円高への基調転換の後は、円高への進み方が普通の感覚よりかなり早くなるということも、あらためて思い出しておく必要があるだろう。 ところで、ECBを皮切りに、流動性不足に対応するための中央銀行による緊急資金供給が始まったのは8月9日からだが、以来ドル高の動きになっている。FRB算出のドル総合力を示す実効相場、メジャーインデックスは、8月8日の77.13から15日には78を超えてきた。対円ではわかりずらいが、「資金供給=ドル高」になっているわけだ。
ではなぜ資金供給となっているかといえば、ヘッジファンド等からの解約が拡大していることの影響が大きいだろう。解約に対応するためにヘッジファンド等が資金調達を急ぎ、その結果流動性危機の様相となり、中央銀行が資金供給に動いているということだ。
何とか中央銀行からの供給により資金調達できたファンド等は、それを投資家に返還するわけだが、その資金は原則米ドルと見られている。このように見ると、今週13日、ECBがFRBとの間で巨額のドル資金を交換したことも理解できるだろう。投資家への返還のために必要になっているのはそもそも米ドル資金だからだ。
つまりECBがユーロ資金を供給しても、それを調達したファンドはユーロ売り・ドル買いでドルに転換する。こういった中で、「資金供給=ドル高」といった構図になっているわけだ。円の「売られ過ぎ」状況は、最近までにかなり解消されたようだ。その意味では、円高はいったん峠を越しつつあるのかもしれない。ただ、本当の「狂った円高」が起こる場合は、統計で捕捉しきれない圧力が発生するものだけに、まだ予断は許せない。シカゴIMM統計によると、投機筋の円売り持ちは、8月7日現在で3.4万枚だった。この間のピーク、6月26日の18.8万枚から円売り持ちは6分の1程度に急縮小した。2−3月に円急騰局面があったが、あの時の円売り持ち縮小は4.7万枚までだったから、今回はそれ以上に円売り持ちが縮小しているわけだ。
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ちなみにこの円売り持ちは、昨年12月5日(円売り持ち2.3万枚)以来の小幅となる。この時はまさに円高・ドル安が114円台でピークアウトした局面だった。このように考えると、この間の円売られ過ぎ是正はかなり進み、それに伴う円高もそろそろ峠を越しつつある可能性もあるのかもしれない。
ただし、もしも今回が「狂った円高」に向かっているならまだ安心はできない。「狂った円高」が起こったのは、たとえば98年夏だったが、この時はIMM統計では円売り持ちがゼロになった後の出来事だった。98年夏は、8−10月にかけて147円から111円まで円暴騰、ドル暴落となったが、この時のIMM円売り持ちは、8月5.4万枚から、9月上旬には小幅ながら円買い持ちに転換していた。そこでいったん円高は小康となったが、10月に入り130−110円への「狂った円高」が展開したのである。
この「狂った円高」の原動力は、損切りの円買いと見られた。その意味では、IMMでは円買い持ちに転じていたものの、まだ円売り持ちも一部には残っていたということだろう。含み損が大きく、最後まで損切りに動けなかった円売り取引の「投げ」が入ったところで「狂った円高」となったのではないか。
さて、今回の場合も、この98年の再来を注目する見方が少なくなくなってきた。先週、史上の流動性は急激に悪化。これを受けて日米欧の中央銀行は緊急の資金供給に出動したが、これはまさに98年夏ヘッジファンド危機以来の信用不安に伴う結果との見方もあった。
そんな98年夏、為替市場で「狂った円高」が展開したのは、表面的には円の買い戻しが終了した後だったのである。その意味ではまだ本当に安心はできないのかもしれない。サブプライムショックで、信用バブル破裂への懸念が広がっている。ところで、信用バブルの一つとして日本の個人投資家による為替投資、通称「FX」への懸念も一部で広がりはじめたようだ。確かに、レバレッジ100倍超といった「異常な与信」は、信用バブルが懸念されるものだけに、要注意とはいえるだろう。サブプライムローンとは、高いリスクの住宅ローンのことである。普通ならなかなか住宅ローンを受けられないような人でも受けられる住宅ローン。それはまさに一種の「信用バブル」だ。
ところで、8月7日付けのある金融専門紙の中では、「一部のヘッジファンドは、サブプライム問題とともに日本の個人投資家の外為証拠金取引を警戒している」といったあるエコノミストの見方が紹介されていた。
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「優秀なヘッジファンドの運用者さえ、自己資金の百倍の与信は供与されない中で、個人への過剰な与信供与を気にかけているという」(同記事)。確かに、このような見方をすると、FX取引も「信用バブル」が警戒される対象の一つということになってしまう。
その上で、この記事は以下のように続けていた。「信託分離保管をしていない業者の経営破たんで個人の証拠金が飛べば、『強制手じまいで円の買い戻しが加速、日本株も急落要因になる』との指摘もある」。
これは一つの「恐怖シナリオ」といえるだろう。業者の破たんにより、含み損を抱えた円売り取引の損失確定、いわゆるロスカットの円買いが強制的に執行されることとなり、たとえばそんな円買いが数百億ドル規模に上るとすれば、円高の急加速を警戒し、さらにロスカットの円買いが便乗、その結果、「狂った円高」が急襲しかねない。
こんな具合に、信用バブル破裂において、サブプライムショックに続く問題としてFXがクローズアップされる可能性はあるのか。FXの中で、レバレッジ100倍超といった「異常な与信」商品はごく一部と見られている。ただし、そもそも数十倍といったレバレッジでさえ、かなり高い信用リスクとはいえるだろう。
為替相場は7月後半から、それまでの円安から円高に転換。ドル円、クロス円とも軒並み急落となっている。ただし、ほとんどの通貨ペアは、反落率がまだ10%を超えていない。一般的にはそういった程度の反落で、大損出現は考えにくい。
ただし少し気になるのは、この円安から円高への転換直前、FXは一種のブームと化していたということ。6月に、FX専業としては初の上場が達成された。また、手数料ゼロなどの新商品によって、7月にかけて預かり証拠金は激増となっていた。そういった中での円高急反転ということになったのは、気になるところではある。
巨額の財政赤字を抱えた日本は、金利が大幅に上昇すると、財政破綻しかねない国であり、その意味では低金利を宿命づけられた国である。そんな日本においては、国内運用だけでは限界があり、外貨運用は不可避の選択肢だ。だから、FXは必要だと思う。
しかし「儲かるから」FXをやるといった風潮は気をつける必要があるだろう。「儲かるから」といった考え方の中で、異常に高いレバレッジといった選択肢が生まれ、そこには信用バブルの懸念がくすぶる。「儲からなくてもやらざるをえない」という外貨運用、FXにおいては異常に高いレバレッジといった選択肢は、決して必要ではないだろう。 ふたたびドル安懸念が浮上している。こういった中では、8月7日のFOMCが大きな分岐点になりそうだ。ドルの先行きを考える上で、「運命のFOMC」になる可能性は要注意だ。
信用不安が急台頭し、金融市場が一気に動揺、ドル急落へ向かっていった展開で最もよく知られているのは98年のケースだろう。そして、この98年のケースは、まさに8月FOMCが重要な分岐点になった。
98年は8月11日に147円という円安値・ドル高値を記録した。それが一転ドル暴落へ向かうことになるのは、8月18日のFOMCで、金融政策の運営方針をそれまでのインフレ・バイアスから中立にしたことがきっかけだった。
さて、今年の8月FOMCは7日に予定されている。金融政策の運営方針は、これまではインフレと景気の両にらみを続けてきたが、インフレ懸念を外し完全中立にするようなら、98年のケースを参考にした場合先行きは要注意となるだろう。
ところで、98年の場合は、なぜ8月FOMCで中立にしたのか。今回と似たように、信用不安の急台頭があった。信用不安の目安の一つであるスワップスプレッドはこの当時0.8%前後へ急拡大した。そういった中で株価も急落。ダウ平均は高値から約10%の反落となっていた。
では今回はどうか。スワップスプレッドは、やはり0.8%程度へ急拡大している。ただダウ平均の反落はまだ5%を超えた程度にとどまっている。スワップスプレッド拡大がさらに続き、ダウ反落も一段と拡大、たとえば1万3千ドルを大きく下回ってくるようなら、FOMC中立化、そして緊急利下げ期待が浮上する可能性が出てくるが、果たして?
しかし今のところ専門家、いわゆるFEDウォッチャーの間では、少なくとも7日のFOMCで中立にするとの見方は必ずしも多くないようだ。
これも理解できなくない。たとえば、2日ECBトリシェ総裁の発言により、ECBは9月利上げを「予告」したと受け止められている。最近のような信用不安拡大、株価下落の中でも、ECBが来月利上げの方針に変わりないということは、FRBも含めて金融政策の方針を、最近の金融混乱により大きく変えていない可能性を示している。
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このように考えると、FOMCが近付く中でも、専門家の間で完全中立化予想が必ずしも多くないのも理解しやすい。ただ一方で、上述のように、FOMC完全中立化となった時にはドル急落リスクにさらされる危険があるということも、頭に入れておきたいところではある。
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